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2-1.機内混乱
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH01

北京での仕事を終えた俺は、そのまま次の上海まで行くことになった。北京支社の中国人が手配してくれたチケットを片手にタクシーで北京首都空港へ。いつもは国際線カウンターだが、今回は国内線だ。

国内線は雰囲気がかなり中国色が強かった。当たり前だが、客層のほとんどが中国人。チェックインカウンターでも言葉がうまく通じない。何とかチェックインを済ませ、荷物を預けて搭乗口に。30分ほどしてアナウンスがあり、搭乗開始になった。

飛行機の中に入ると、中は大騒ぎになっていた。乗客が手に荷物を沢山抱えて乗り込んでくる。その手荷物の量が尋常じゃない。何故みんな預けないんだろう。乗客たちは、両手一杯の荷物を荷物入れに入れてゆく。席はまだ半分くらいしか埋まっていないのに、荷物入れは既に一杯だ。それでも、次から次へと乗客が、それぞれ荷物をかかえながら乗り込んでくる。

荷物入れがほぼ一杯だと見るや、先に入れてある荷物を勝手に動かして隙間をつくる。で、そこに自分の荷物。多少狭くてもぎゅうぎゅうと荷物を押し込んでしまう。人によっては、あちらの棚に少し、こちらの棚に少しといった感じで分散して入れている人もいる。客席の奴らも世話焼きばかりで、こうした方が良いんじゃないかと我先に口出しをする。こんな調子で皆わいわい話しながらやっているのだ。互いに知り合いでもないだろうに、妙な連帯感が生まれているようだ。

通路側の席に座って見物モードだった俺に話しかけてくる人がいた。どうやら席を替わってくれと言っているらしい。手には額縁のような巨大なものを持っている。一つ窓側に席を移ると、その男は俺が座っていたシートに腰を下ろした。額縁は通路に置いたまま、自分の席の方に立てかけて上に手を乗せている。本人的にはこれでOKらしい。でも、そりゃまずいだろおい。

機内の喧騒を全く気にしていない様子のフライトアテンダントだったが、さすがにこれは注意しにきた。そりゃそうだよな。バスに乗ってるんじゃないんだから。

隣の男が「怒られちまったよ」というような感じでなれなれしく俺に話しかける。俺もたいがい中国語には慣れたが世間話をするレベルまでは到底いかない。仕方なく、「中国語しゃべれないんだよ」というジェスチャーをしてみせた。


03 : 17 : 23 | 筆談小姐2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
2-2.やられた
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH02

機内が大混乱なので、この調子だと相当離陸が遅れるんじゃないかと思ったが、意外に時間はかからず、定刻から10分ほど遅れただけで飛行機は飛び立った。

程なく着いたのは上海の虹口(hóng kǒu)空港。上海の西側にある、国内線の空港だ。

空港に着いて荷物の受け取りカウンターへ。国内線なのでイミグレーションなどもなくてスムースだ。当たり前なんだけど、最近飛行機といったら国際線ばかりだったので何だか変な気分だ。しばらく待っているとベルトコンベアが動き出して荷物が流れてきた。ほどなく見覚えのあるカバンが流れてきた。でもちょっと違和感がある。何だろう。

とりあえず手を伸ばしてカバンを取る。荷物の番号をは確かに俺のものだ。でも、何か変な気がするのは何故だろう。はっと気がついた。カバンの外ポケットがぺしゃんこになってる。チャックを開けると、ポケットの中はがらんとしていた。

畜生め、やられたっ!

少し青ざめながらポケット中を覗き込む。うかつにも、携帯電話を入れっぱなしにしていたのだ。こいつを盗られたらおおごとだ。しかし幸いにして、携帯電話はがらんとしたポケットの一番奥に残っていた。日本の携帯電話会社のロゴが入っているので、使えないとわかって残したのかもしれない。

でもそうなると、何を盗られたことになるんだ?他に入っていたものといえば、付箋、消しゴム、クリップ、耳かき、爪切り。小物ばかりだ。こんなものを盗ってどうするつもりなんだろう?

そんなに貧しいのか?
っつーか、いくら貧しくっても付箋はいらんだろ。

被害者の俺が言うのも何だけど、携帯電話をそのまま鉄くずとして売った方が儲かるんじゃないのか?

不思議な話だが、それを楽しむ気にはなれない。物を盗られていい気はしない。しかしあえて事件として騒ぎ立てるほどのものでもない。やや憤慨しながらも、そのまま通関ゲートを越えて空港の外へと歩を進めた。



03 : 18 : 41 | 筆談小姐2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
2-3.発音相違
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH03

空港でいきなり小物を盗まれたことに気づき、やや落ち込みながらも荷物を引き、空港の外へ。暖かく湿った空気が馴れ馴れしく俺を包み込む。人の物を盗んでおきながらその馴れ馴れしい雰囲気は何だと、やや八つ当たり気味に頭の中でぼやきつつ、タクシー乗り場へ。しかし、同じ中国なのに北京と随分雰囲気が違うもんだ。

中国のホテルというのは国際チェーンでも中国語式の呼び名があるところが多い。シェラトンやシャングリラはそのままだけど、グランドハイアットは「君悦」だし、北京のスイスホテルは「澳港中心」(香港・マカオセンター)と呼ばれている。スイスホテルという呼び名もあるけど、スイスが中国式の発音で「ルイシー」になるので、結局スイスホテルと言っても通じない。

今回の上海のホテルはリッツカールドンなのだが、ガイドブックから写した中国語表記をどう読んでもリッツと読めない。こりゃ駄目だと思って、筆談用のメモ帳に書いて運転手に見せることにした。後で聞いたら、ポートマンと呼ばれてるんだそうだ。ビルの設計をしたおっさんの名前なんだそうだ。

タクシー乗り場まで来ると、係員が
「チュイナリヤ」
と聞いてくる。去哪里qù nǎliはわかるが、「ヤ」ってつけたっけ?とか思いながら、行き先の紙を見せる。荷物をトランクに載せてバックシートへ、運転手に
请往这里走 qǐng wǎng zhèli zǒu(チンワンジューリーゾウ)」
と告げながらメモ帳を見せると
「ああ?」
と聞き返された。行き先はメモ帳に書いてあるので、見ればわかるはずだ。彼が聞き返したのは、俺の言葉に対してだった。

発音が違う。

北京で聞かれる中国語と上海の中国語は違うのだった。概ね一緒なんだけど、訛りがある。俺の拙い中国語も、北京ではそれなりに通じてはいたんだけれども、上海ローカルの運転手には違和感があったらしい。

やれやれ、また発音はやり直しかよ。



03 : 19 : 58 | 筆談小姐2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
2-4.まじかよ
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH04

タクシーに乗って上海市内に入ってゆく。市内の様子も北京とは随分と違う。第一に道路が狭い。北京の道路はやたら車線が多く、1ブロックの間隔も長いんだけれども、上海はそれと比較すると随分小じんまりとしている。なんだか東京と似ている。高速道路が高架で走ってるところなんてまさに同じだ。

道端のネオンも多い。しかも、日本語の看板がやたら目につく。「クラブ●●」とカタカナで書かれたネオンが見える。現地の言語に触れることが好きな「言語フェチ」の私としては面白くない。はるばる飛行機に乗ってやってきたのにそりゃないだろう。がっかりだ。

ホテルに着いてタクシーを降りる。代金を払うとお釣りで硬貨が来た。1元硬貨なんて初めて見た。北京では1元は紙幣だったぞ。ちくしょう、モダンじゃねぇか。

なんだかお上りさんのようになりながら「給我发票」といって領収書を請求。一応領収書はくれるけれども、何だかぎこちない。今ひとつちゃんと言葉が通じてる感じがしないのだ。やれやれと思いながらホテルに入り、チェックインを済ませた。荷物を解いてから、先にこちらに来ている上司Hに電話をかけた。

今回の仕事、実は上司が二人いる。MとHだ。二人とも部長なんだけど、管轄する業務が若干違う。普通はこんなことにはならないんだけど、今回はちょっと異例なのだ。ちなみにこの二人、ギャラは同じだがキャラが全然違う。臨月のようにお腹の突き出たMと痩せぎすで慎重が180cmもあるH。享楽主義者なMとストイックなHという感じ。まったく、ブログに書きたくなるくらい良い組み合わせだ。

ちなみに北京初日の夜にはHも同行していたのだが、彼だけ仕事があるからとKTVツアーに行かなかった。当然ながら仕事の進め方も全然違う。ウインドウズとマックを使って仕事をしてるようなもんだから、下っ端の俺たちは苦労が耐えない。昔はMacでExcelを使うと地縛霊でも取り憑いてるんじゃないかと思うくらい遅かったらしいけれど、それに似た感じだ。って、例えがわかりにくいか。

さて、とにかく、今回の仕事。北京にMが行くのと同時並行で上海にはH部長が来ていたというわけだ。上司Hの携帯に電話してホテルの1Fで落ち合う。コーヒーを飲みながら互いの仕事を報告。仕事の話が一段落したところで、Hさんがおもむろに口を開いた。

「さて、今晩はどうしましょうか」
「はぁ??」

俺は我が耳を疑った。



03 : 21 : 08 | 筆談小姐2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
2-5.婉曲表現
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH05

今回の出張で、上司のMさんに大分北京の夜を連れまわされたが、ある意味、Mさんはそういう遊びが違和感がない人だった。そういう遊びが好きそう、ということではなくて、負けず嫌いで何にでも首を突っ込むタイプの人なのだ。

海外旅行のオプションで、ダイビングとゴルフとをどちら選びますかと聞かれて、午前中にゴルフして午後にダイビングを入れるような人だ。来たボールは全部打ち返すというか、山があったらとりあえず登るというタイプ。だから、中国でそういう遊びがあると知った瞬間から、徹底的に店を研究してトライする、というのは容易に予想できたし、誰もが違和感を感じなかった。

一方、もう一人の上司Hさん。彼は全く違うタイプの人間だ。とりあえず反応する、というんじゃなくて、自分なりの世界観というか、ルールを持っていてそれを徹底的に守る人だ。仕事振りもそれが現れていて、物凄く整理された仕事運びをする。ある意味、潔癖症というか神経質な雰囲気すら感じることもある。自分専用の小さいホウキを持っていて、それで机の上を黙々と掃除してたりする。そうしている時のHさんはやや近寄り難いものすら感じるのだ。

多分Hさんと一緒にしゃぶしゃぶを食べたら、Hさんがアクを綺麗にとってくれるのでとても美味しいしゃぶしゃぶが食べられるんじゃないかと思う。そんなHさんは、Mさんの先導で北京で一緒にそういう店に行ったりしたけど、引っ張られて仕方なくという感じで、自分から行くようなタイプではないと思ってた。

そのHさんと二人の夜だ。俺も自分から誘うタイプではないので、このまま清純な夜を過ごすのも悪くないと思ってた。ところが、Hさんから

「今晩どうしましょうか」

という建設的な発言。これにはほんとうに驚いた。

絶句する俺に構わずHさんは言葉をつなぐ。

「こちらの関係会社の人から、店を紹介して貰ったんですよ。もし疲れてなければなんですけどね」

なぁるほど、関係会社が良い仕事をしたわけやね。流石のHさんでも目の前に絶好のセンタリングが着たらゴールしてみたくなっちゃうわな。魔が差すってやつですか。

俺が疲れてなければ、なんてことを言っているが、行きたくなければメモを握りつぶせばいい話。まぁでもそんな野暮なことは言いっこなし。俺もたいがい従順な部下だから、こういう時には素直に流れに従う。

「いや、そんなに疲れてないですよ。折角だから行きますか」

この“折角だから”とかつけるあたりがまた、ねぇ。いやいや、日本語って美しい。

ま、そんなこんなで上海初日の夜からいきなり出撃命令が下ったのでありました。



03 : 23 : 50 | 筆談小姐2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
2-6.だめだめ
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH06

で、俺たちには選択肢があった。Hさんは二つの店を教わっていたのだ。一つは中国語しか通じない店、もう一つは日本語が通じる店。女の子のレベルは前者の方が良いらしい。

女の子のレベルはともかく、俺にしたら前者の店しか有り得ないんだけど、そこは上司を立てなければならない。で、Hさんはどうかというと、日本語が通じる店に行きたそうな雰囲気。まぁそりゃそうだよな。言葉が通じないのでコーフンする変態は俺くらいのもんだ。じゃ、2番目の店にしましょうか。

二人でホテルの前からタクシーに乗り、店の前につける。繁華街の真ん中の道路沿い。目立たない入り口から地下に降りてゆく構造。どうも日本式のKTVというのは奥ゆかしいというか、ひそやかな店構えが多い気がする。階段を下りてゆくといきなり店員が並んで「いらっしゃいませ」の連呼。日本語だ。しかもみんな大声で。まるで居酒屋みたいだ。

この店は結構有名でネットの掲示板でもスレッドが立っている。システムは他と一緒。ママという人が出てきて料金などの説明をすると、ずらずらと女の子が入ってくる。30人程度か。前列の子はしゃがんで後ろの娘が見えやすいようにしている。

すっかりやる気が削がれている俺は、かなり適当に指名をした。完全日本語環境なので、まるで緊張感がない。駄目だよこりゃ。気合が入らないや。

女の子が隣に座って、最初に自己紹介。

「みゆきです」

だって。あり得ないだろそりゃ。どっからみても中国人だよあんたは。初っ端からげんなりする。日本語喋れてるけどひどい訛りなのだ。でも、向こうは喋れてるつもりなんだろうな。まぁ流暢だとは思っていないだろうが、まぁ話が通じるのは事実だし、日本語で接客するのも店のサービスの一環なんだろう。

しかし、夜の中国語勉強中の俺にとっては、何で金を払ってまでして下手な日本語で調子を合わせなきゃのかわからない。どうせカタコトなんだったら、俺のカタコト中国語を喋らせろってんだ。

勿論、中国語で会話しようと言えば応じてくれるけれども、会話が通じなくなりかけたらすかさず日本語で助け舟が出てくる。こっちのため、というよりも女の子の方が面倒臭いと思うんだろう。まぁ現実的に考えればその通りだ。日本語で話が通じるのに、何が悲しくて変な客のカタコト中国語のおままごとに付き合わなきゃならないのだ。特別料金でも貰わなければ割りに合わないよな。

しかし、そう考えると、中国式KTVで俺の相手した女の子はとんだ災難だよなぁ。いや、申し訳ない。まぁでも、客商売ってそんなもんだよな。



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2-7.戦意喪失
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH07

さて、お相手をしてくれたその娘だけれども、少し歳がいってたみたいだ。

「あなた間違えたね。私みたいなおばさんを選ぶなんて。きっと暗くて見えなかったね」

明るさの問題じゃなくて、そもそも真面目に見て無かったよ。と思いながら

「何歳なの?」と聞くと
「60歳ね」
「えーウソでしょう」
「いや60歳ね」

もうそこから話が進まない。
やれやれ、どうしたものか。

ふと隣を見るとHさんがいい雰囲気だ。彼が選んだのは長身の女の子。背中がばくっと開いたドレスを着ている。ソバージュの髪ではっきりした目鼻立ちをしている。

「こういう商売だと、いろんなお客さんいるでしょ」
「そうね」
「嫌なお客さんだっているでしょ」
「もちろんいるよ」
「そういう時どうするの」

話、はずんでるみたいだねぇ。やや本音系のこの流れはいい感じじゃないですか。でも人の話を聞いていてもしょうがないよね、問題は俺の方だよ。

しょうがないのでカラオケを入れる。カラオケに来たんだから歌わなきゃね。少ない選択肢の中から歌える曲を入れると、歌ってる最中の画面がもうエロエロ。女の子がいきなり裸になって反り返ったりしている。すかさず隣の嬢(60歳)が耳元でささやく

「あなたエッチね。ワタシもコーフンしてきちゃったよ」

やめてくれよ、あんたは客が歌うたびにこの画面見てるんでしょうが。

しかし俺は何をしてるんだろう。考えてみたら昨日は北京でKTVだった。しかも連日、日式(日本式)で、げんなりしている。上司思いにも程があるってもんだ。まぁとにかく、飛行機でモノを盗まれたし、今日は厄日に違いない。

そんなこんなで、何も良い思い出がないまま上海初日の夜は更ける。



03 : 25 : 55 | 筆談小姐2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
2-8.コメント
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH08

翌日は朝から上司のHさんと一緒に客先回り。昼にホテルに戻ってきて、昼食を一緒に食べようという話になった。Hさんはそのまま空港に向かい、日本行きの便に乗る予定だ。偉い人は忙しくって大変だよな。

ホテルの中華料理屋に入る。実は二人ともあまり食にはこだわらないたちだ。HさんはオーダーメイドのYシャツを着ているような人で、多分食べるものにも自分なりの拘りがあるのかもしれないけど、あまり自己主張はしない。メニューを見ても、どうぞお好きなものを、とか言って自分の注文はなかなかしないのだ。で、俺も食い物に対してはそんな感じなので譲り合うばかりで注文が決まらない。結局、ウエイトレスの小姐の薦めに従ってほぼ全ての皿を注文してしまった。

小姐が去り、料理が来るまでしばらく間があく。そういえばHさん、昨日はソバージュの彼女を持ち帰った筈だけど、その話は一言も出てこない。まぁそもそも昨日は俺の方がすっかり萎えまくって戦線離脱していたので、あまり自分だけ楽しんだ話をしたらまずいと思っていたのかもしれない。でも、折角の機会だし、俺のことを堅物だと思われても良くないので探りを入れてみることにした。

「昨日はどうでした」
「いや~」

とちょっと間があって

「あの娘、いくつくらいだったと思います?」
「え~、24,5才ですか?」
「22歳なんだって」
「へぇ」

でかい女って歳いって見えるんですよね、という言葉が喉元まできたがすんでのところで飲み込んだ。Hさんはそれに気づくことなく言葉を続ける。

「モデルやってたんだってさ」
「あぁ、背がすらっとしてましたもんね」

ばっくり開いたドレスの背中を思い出した。面積的には俺の背中よりも広いかもしれないと思っていたのだが、口には出さなかった。
しかしまぁ、事情を知らない人が聞いたら友達の話をしているくらいに思ったかもしれない。それほど、いやらしさの無いというか、欲望から距離を置いた話ぶりだった。いかにもHさんらしい話し方だと思った。

じきに料理が運ばれてきた。そういえば忘れてた。Hさんは食が細いんだった。180cmの痩身なHさんは、すぐに腹いっぱいになってしまって戦線離脱だ、でも、料理はというと、小姐の薦めでフルコース状態だ。昼間から死ぬ思いで平らげて、勘定をしたら、1,300RMBもとられてしまった。

まいった。昼に2万円相当食っちまったなんて、経理に何て言い訳しよう。



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2-9. 蛇の道は蛇
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH09

昼食を終え、上司のHさんと別れた午後は、俺と関係会社のスタッフとで客回りを続ける。関係会社は中国の会社で社員のほとんどが中国人だ。でも、日本の客が多いので皆日本語が堪能。しかも、関西弁だ。俺の知ってる中国人だけかもしれないが、中国人に関西弁はよく似合う。

さて、そのままお客さんを招いてディナー。中国人のスタッフが通訳してくれているんだけれども、比較的俺たちのビジネスが分かっている人なので話が早い。一言、二言話すだけで意図を汲み取ってくれて、自分の言葉で相手側と会話を進めてくれる。正確性は落ちるかもしれないが、会話の流れが自然だし、相手がリラックスしているのがよくわかる。とはいえなかなかハラを割った話は出てこない。まぁこの辺はどこの国でも共通だ。

さて、ディナーが終わり、お客さんをお送りするとお開きだ。中国人チームのリーダーであるGさんがこちらにきて「お疲れ様でした」と手を差し出す。いやこちらこそ、いろいろお世話になりました。Gがさらに話す

「で、この後は何かご予定ありますか?」
「いえ、ホテルに戻るだけですけど」
「じゃぁ、折角ですのでもう一軒行きますか?」

またこれかよ!
3日連続だよ。

車に乗ってディナーを食べたレストランを後にする。横に乗ったリーダーが話しかける。かなり大柄で、恰幅も良いので広いはずの車内が狭く感じる。

「Hさんに店を紹介したんですけど、行きましたか?」

なんだ、あんただったのかよ、あのナイスなアシストは。Hさんたらもう大満足だったよ。という本音は心にしまって

「ええ、行きましたけど」

と木で鼻を括ったような回答。まだちょっと相手のは肚が読めていないので、やや警戒モードだ。

「どっちに行きました?」
「店の名前覚えてないんですよね」
「階段を下りてゆく方ですか、上ってゆく方ですか?」
「降りてゆく方です」
「じゃ、今日は上ってみましょうか」

するってぇと、中国式の方ってことじゃないですか。いいじゃない。流石、中国人。蛇の道は蛇だねぇ(意味が違うよ)。



03 : 28 : 27 | 筆談小姐2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
2-10.中式KTV
2007 / 02 / 09 ( Fri )
SH10

で、向かったのが中国式のKTV。以前、北京で中式に行った時には、映画のセットかと思うほどの電飾ギラギラのド派手な外観に驚かされた。しかし今回も別の意味で驚いた。店はデパートの8階なのだ。人目を忍ぶような店構えの多い日式とはえらい違いだ。あっけらかんというか、これでいいのか?

入り口を入ってすぐに左に曲がるとエレベーターホール。普通に買い物に来ている若い男女が沢山エレベータを待っている。彼らと一緒に階上に昇ってゆく。途中で買い物客が続々と降りて、最上階が目指すKTVだ。

KTVというのは、客が望めば女の子をお持ち帰りできる風俗店だ。そんなものがデパートの上にあるというのが日本的感覚では理解しにくい。だいたい日本じゃデパートの上の方っていったら食堂街だと相場が決まってる。それが中国ときたら。。。

まぁある意味、食べるということには変わりはないんだけれども、そりゃちょっと拡大解釈のしすぎってもんじゃないか?

こっちとしては、店に行く段階でそれなりの心構えになっているので、その精神状態の中で明るい照明の下、普通の買い物客と同じエレベーターに乗るのが恥ずかしいというか、違和感がある。でも、同行している中国人チームの面々はまるで気にしている様子もない。これはやはり国民性の違いなのか。まぁ、そう考えると日式KTVのあの独特の造作は、日本人の心情を汲んだものになっているのに違いない。

8階でエレベーターの扉が開くと、そこはゴージャスな空間が広がっていた。だだっ広いロビーの受付を越えて奥に入ると沢山の席が並ぶ大ホールだ。その横に並んでいる個室も一つ一つが広い。内装もかなり金がかかっていそうだ。案内された部屋は大部屋。ソファの向こうにテーブルがあり、その上にワイングラスが並んでいる。後で聞いたら、ここは上海でも最高級クラスの店だったらしい。

リーダーがママらしき人と話をして段取りをつけている。程なく、女の子が入ってきた。皆、白いドレスを着ている。リーダーが俺に言う、

「左側から3人は英語喋れる娘です。そこから選ぶと良いですよ」

ま、人生の岐路ってやつですか。筆談小姐を貫くなら彼の言葉に耳を貸す必要はないよね。しかも、英語喋れるとか言われても、俺自身が英語全然駄目だしね。

人生の選択を迫られながら、上海2日目の夜はまだ宵の口



03 : 29 : 21 | 筆談小姐2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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