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3-1 取組再開
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-01

仲良くなった小姐を落としきれず、無念の帰国をした俺。
しかし、帰国してから数日間は何もする余裕がなかった。何しろ仕事が溜まっている。これまでの報告やら後のフォローやら費用の精算やら・・。徹夜続きの後でようやく仕事が一段落したのは帰国してから1週間後のことだった。

若手のTは死んだ魚の様な目をしたまま、よろけるように家に帰っていった。俺もそそくさと支度をして家に帰る。かれこれ3日ぶりの帰宅だ。でも、帰宅して風呂を浴びると眼が覚めてきた。身体は疲れているんだけれども、仕事が終わった開放感で何とはなしに興奮状態だ。きっとTも今頃サクラ対戦をやってることだろう。俺はというと、PCを立ち上げ、英文メールを打ち始めた。相手は例の彼女だ。

執念深いというか何というか、俺はまだ諦めてはいなかった。今回の仕事は規模を縮小しながらも日本の人間が必要な状況が続きそうなのだ。ということは、いずれ近いうちにまた上海に行くチャンスがある。それまで何とか関係を繋ぎ止めておけば、次の上海はウハウハ出張確定だ。

英文でメールを打ち始める。帰国してからの初メールで緊張する。何度か書き直し、結局できあがったのは長文のメール。上海でのいろいろなことを振り返り、彼女の抱える人生の問題に共感し、彼女の状態を案じ、そして、また会える日へと思いを馳せる。あらゆる角度から推敲を重ねたメールをようやく送信したころには東の空がすっかり明るくなっていた。

翌日。返事はこなかった。

さらに翌日、まだ来ない。あれれ?

3日目、たまりかねて ”Hello? Something happened??” みたいな短いメールでつついてみたら、4日目にようやく返事が来た。

タイトルは“reply”。そのまんまじゃないか。

「ごめんなさい、ここ数日インターネットを見てなかったの。あなたの優しさには感謝してるわ。私の方は変わりなし。また会える日を楽しみにしてるわ。今、授業の合間なの、もう授業が始まるから行かなきゃ。後でまた。」

普通のPCメールではなくSMS風に改行もスペースもない文章なので、余計に短く感じる。
中身もほとんど社交辞令だし。

なんだかなぁ。


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02 : 41 : 37 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(4) | page top↑
3-2 話題選択
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-02

帰国1週間後に送ったメールの返事が4日後。

あまりにもそっけない返信にくじけそうになりながらも、俺はまだ諦めなかった。どうも重たい路線はよろしくないようだ。翌日仕事をしながらも頭の中で一人作戦会議を続ける。

その時、ふと学生時代の先輩の話を思い出した。
彼は合コンで連戦連勝。輝いていた。
何でそんなにうまくいくのかと問うと、彼はきわめて明快に答えた。
『軽いノリで、答えが分かり切った質問をすること』
中身のある会話はしちゃ駄目なんだそうだ。

そうだ、これだよこれ。今回俺はこの教えに従うことにした。
となると軽い話題は何かないものか。そうだ、音楽の話題なんかどうだろう?

彼女は洋楽が好きなのだった。初めて食事をした夜、道を歩きながら音楽の趣味の話になり、『へぇ、例えばどんな人の歌が好きなの』、と聞く俺に、彼女は『Norah Jones』と答えた。
調べてみるとこのアーティストはアルバムを2枚出している。そこで、彼女にどっちのアルバムが良いか聞いてみようと思った。

「やぁ、元気?あのさ、以前ノラジョーンズ好きって言ってたよね。今度アルバム買ってみようと思うんだけど、1stと2ndどちらがお勧めかなぁ?」

これだけ。
今度は軽いですよ旦那。しかも答えやすい2択の質問付きだ。
さらに、もし話題を膨らませたかったら曲に関するコメントでも何でも付け加えればいいわけだ。
これはなかなか食いつき易いメールじゃないですかねぇ、え?、お嬢さん。

夜中に送るのはまた重い気がしたので、書いたメールを翌朝まで寝かせて、朝の始業前に送信した。我ながらなかなか芸が細かい。

さて、今回のメールには絶対の自信はあったんだけれども、前回のことがあるから、また数日は待たなきゃならないんじゃないかと思ってた。
しかし、予想を大きく覆し、その日の夕方にはメール着信音が高らかに鳴り響いたのだった。

おおっ、これは試合の流れが変わりましたよ!?
期待に胸を膨らませながらダブルクリックだ。

「Norah Jones なら1枚目が良いわ。ところであたし今日風邪をひいたみたい、頭が痛いの、病院にいかなきゃ、じゃぁね。」

あれ?それで終わり?
アタマ痛いんなら治ってから返事よこせよ。ここで答えちゃったら話が膨らまないじゃんか。俺がどんだけ作戦練ってこのネタ振りしたと思ってんだおい。

がっくりしながらも、キレずに風邪をいたわるメールを1時間以内に送ってしまう俺だった。



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02 : 43 : 31 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-3 帝王来日
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-03

そんなメールのやりとりをしていたら、上海支社からYが出張で日本に来ることになった。俺たちが中国で進めていた仕事の報告だ。

呼んでくれれば行くってのに、話がどこかでこんがらがって日本で打合せをすることになってしまった。ずっとホームゲームだったYもたまにはアウェイで試合したいってことかもしれない。そうなると、迎え打つ日本代表の俺たちも作戦を考えないといけない。早速事前打ち合わせだ。

日本の会社だと時々あるんだけど、うちの会社もご多分にもれず、重要な会議は喫煙ルームでされことになっている。早速仕事もそこそこに喫煙ルームで網を張り、上司のMをつかまえる。

「やっぱり、中国にないもんがいいですかね。イメクラみたいなのとか」
「いや、逆に回りくどくって駄目じゃないかなぁ。もっとストレートなのがいいよ」
「じゃ、やっぱソープですか」
「それ系じゃないかなぁ」
「どこかいい店知ってます?」
「俺も出張でもなきゃ風俗行かないからなぁ。そうだ、F課長に聞いてみたら?」
「F課長ですか??」
「あれ?知らないの?彼はソープ狂いで有名なんだけど」

えぇっ?知らなかった。あの彼がですか?F課長というのは、俺の隣のシマの課長で、仕事の上では物凄く厳格な人で知られている。特に彼の新人イビリ、じゃなかった、新人教育は有名で、若手からは鬼軍曹と呼ばれている。その彼が、ソープ狂いだったなんて。しかもそれが「有名」ですと?一体どこで有名?

喫煙をすると重要な会議に参加できるようになるが、女遊びを語り合える上司を作るとまた一段世界が広がる。そう考えると2ヶ月前の中国出張はまさに人生の転機だ。

でも、流石の俺も普段会話もしないF課長にいきなりソープの話を振る勇気はなく、ネットで高級ソープを調べただけで俺と若手のTとでYとの夕食に臨んだのだった。そして夕食が終わり、店の外に出た時にYに恐る恐る話を切り出す。
「さて、これからどうしようか」

すると、Yはこともなげにこう言い放った。
「あ、俺はこれからいつも行く店に流れるよ。じゃぁな。」
「えぇっ?」

聞けば彼は日本は3度目らしいんだけど、しっかり人脈を築いているようだった。
ホームゲームは惨敗。夜のロナウジーニョに格の違いを見せつけられた俺とTは、二人でとぼとぼと会社に戻った


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3-4.金銭関係
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-04

Yが帰国した翌日、風邪が治った彼女から返事が来た。

今度は少し長文だ。風邪で少し弱気になったのかもしれない。母親のことを書いている。彼女は両親が離婚した関係で母親への依存が強い。世界中で自分を愛してくれているのは母親だけだと言って泣いたのは随分前、○○飯店に連れ込んだ時のことだ。今回のメールもそれと同じ様なことが書かれている。

彼女はKTVで働いているが、それは自分の夢を実現するためであり、また、稼いだ金の一部を母親に送っている。それは彼女の母親に対する愛情の証だが、それでも十分ではない。

微妙な話だが、メールで金の話が出たのは初めてだ。中国小姐にハマッた話は山ほどあるし、そのほとんどが金がらみになっているということも知っている。金が愛情の証になる文化なのだという人もいれば、愛情などなく単に日本人を金づるとしか捉えていないのだという人もいる。勿論人によりけりだとは思うけれども、こうして彼女のメールでmoneyという単語が書かれているのを見ると、やはり中国小姐とのやりとりではこれは避けて通れない道なのかと思った。

彼女はKTVに勤めているが、所謂“お持ち帰り不可”の小姐だ。接客はするが、身体は売っていない。でも、長く勤めていてそういうことが皆無ということは有り得ない。今なかったとしても、いずれ何らかのしがらみや話の経緯でそういうところに追い込まれることは間違いないだろう。

2日考えて、俺は返信を打った。表面上はごく普通に、彼女の母親への愛情に共感し、夢を追う彼女の姿勢を擁護し、母親への愛情が不十分だという彼女にそんなことないよと勇気付ける、そういった内容だ。そして、その中に一文、こういう文章を紛れ込ませた。

「俺は君のことが好きだ。だから、本当に困ったことがあったら、最初に相談して欲しい」

虎穴に入らずんば虎児を得ず、というか、郷に入れば郷に従えというか、まぁとにかく、それが必要なんだったらハマってみるのも悪くない。しかし、それをダイレクトに話すような空気でもないので、間接的に餌を投げてみることにしたのだった。

とにかくはゲーム開始。さて、返信はどうなることやら。

果たして彼女からは1週間、返事は来なかった。


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02 : 46 : 34 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
3-5 国際架電
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-05

餌を仕込んで一週間。バッチこーい、という感じで待ってはみたものの反応がない。逆にこっちが不安になる。結局、先に動いたのは俺の方だった。
今回はメールじゃなくて電話だ。これなら返事はリアルタイムだ。

水曜日の朝、始業間際に会社の外に出て自分の携帯から国際電話をかける。以前中国にかけたのは北京の小姐にだった。あの時は中国語なのでそうとう厳しかったが、今度は英語なので多少は楽なはずだ。気持ちを高めて番号を押す。

国際電話番号に国コードの86、それからさらに10桁の携帯電話番号。異常に長い数字の列を打ち込んで発信ボタンを押すと、しばらくたって呼び出し音が鳴り始めた。3コール目で彼女が出る。

「喂、你好」
「Hello? This is **** speaking」
「Oh, how are you?」

最初の様子から声のトーンががらりと変わる。かなりいい感じだ。
しかし、会話が始まって程なく重大な問題が発生した。全然相手の言うことが聞き取れないのだ。

考えてみれば、俺の英語はもともと犬の糞レベル。上海での数週間で上達したものの、帰国してから既に1ヶ月、日本語ばかりを使う生活で今やすっかり路傍の糞だ。

早口でひとしきりまくし立てた彼女が何事か疑問文を発した。
語尾を上げた文章で発言を終わり、黙って俺の答えを待っている。
いや~こりゃまずいな、何聞かれたか全然わからないや。

沈黙する俺に対して彼女が訝しげに尋ねる。

「Are you OK?」

いやもう、正直全然オーケーじゃないんだけれども、それを説明するわけにもいかない。
かといって今何の話してたの?と今更聞くのもいかがなものか。

数秒の間にいろいろなことを思い巡らした挙句、俺はこう答えた

「ごめん、ちょっと良く聞き取れなかった。回線の調子が悪いみたい」
「Oh. Because this is an international call, right?」
「イエース」

あぁもう自分が情けない。でも、この危機を脱するにはこれしかなかった。
俺は言葉を続ける。少なくとも自分のペースで言葉を投げる限りは問題ない。

「Anyway, it’s so nice to hear your voice」(まぁでも声が聞けてよかったよ)
「Un.. It’s much better」(うん、こっちの方がずっといいわ)

呟くように話す彼女の声のトーンが心に響く。
大変だったけど電話した甲斐はあったと思う俺だった。


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3-6 台式歓待
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-06

彼女と電話で話した翌日、今度は少し長文のメールが送られてきた。まぁいろんな意味で電話は良い刺激にはなったようだ。しかし、その後がまた続かない。また徐々にテンションが下がり、1ヶ月後にはメールの間隔が1週間以上になりつつあった。

そんな折、上司Mと一緒に別件が持ち上がった。台湾への視察出張だ。

ボーイング747で成田から台湾中正空港へ。夜便で入り、翌朝一番から工場を視察して会食をして、さぁいよいよフリータイムだ。

台北の街は栄えていた。北京から上海に初めて来た時の印象もそうだったが、台北は上海からさらに一段進めた感じだ。街並みは明るく、でもちょっと雑然とした感じがある。繁華街らしきところで車を止める。この辺の指示は全部俺の役目だ。台湾は北京語だからまぁ問題ない。レシートが出るのを待つ車内で上司Mが感心したように言う。

「客観的に見てさ、お前は英語よりも中国語の方が喋れてるよ」
「えーマジですかそれ」

確かにそうかもしれない。英語の会議ではそもそも俺はほとんど喋らないのだ。一方、街中での中国語はカタコトではあるけれども、Mは全然駄目なので俺が率先して喋っている。実際には大したことは喋っていないんだけど、何も知らない人がみたら中国語の方が得意な人だと思うかもしれない。

二人で台北の街に降り立ち、良さそうなKTVを探す。今回は事前調査が十分いかないので行き当たりばったりだ。しばらく歩き回って、Mが選んだKTVに入った。

初めて北京でKTVに行った時もMの引率だった。あれは面白い体験だったけど、店のレベルはいまいちだった。今回、台北で入った店も同様。そもそも中国のようなKTVとは違う代物だ。カラオケボックスみたいな部屋に案内されて、しばらく座っていると女の子が二人入って来る。選択の余地無しだ。

ビールがジョッキで出てきてさぁ乾杯。と、いきなり一気呑み。次にボーイが俺とMに挨拶をしにくる。挨拶代わりにまた一気飲みだ。

昔の中国では「乾杯」というと本当に杯を干さなければならなくて、飲み会のたびに何度も乾杯があるので大変だという話を聞いたことがあった。しかし実際には北京でも上海でもそんな場面に遭遇することは殆どなかった。しかしここ台湾では、古き文化がまだ息づいていた。

ジョッキを3杯目を一気に喉に流し込みながら、ダーウィンの進化過程図が頭をよぎった。



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3-7.上司没入
2008 / 02 / 24 ( Sun )
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初めての台北の夜。飛び込みで入ったKTVでいきなり一気飲みの洗礼。入って30分も経たないうちにジョッキ3杯目だ。ビール自体は物凄く薄いので全然酔わないんだけど、水分をジョッキで何杯も飲むというのはそれはそれでかなり大変だよ。

さて、酒は酒として小姐の方はどうなのかというと、良くも悪くも商売ずれしている感じだ。それなりの盛り上げ方は心得ているのだけれども、逆に言うと大陸の小姐のような初々しさは感じない。これが文化の成熟度ってやつなのかねぇ。ついてくれた小姐はルックスも性格も悪くないんだけど、全体のノリがアレなので今ひとつ没入できない。

時間的にはもう1時間以上が過ぎ、場は段々とこなれてきた。Mの方はどうかと横目で様子を伺うと、俺とは違ってかなり楽しんでいらっしゃる様子だ。なぜかYシャツを脱いでおじさんシャツ1枚になっている。何で?、と思っていると横から小姐の手が伸びてきて俺のYシャツのボタンを外し始めた。まじかよ。

俺もお返しに小姐の服を脱がせにかかる。Mのお相手をしている小姐を見る限り、客の服を脱がすのは彼らの盛り上げ方であって決して乱痴気騒ぎをしようとしているわけではなさそうだ。なので逆に、そこを逆に斬り込んだら小姐がたじろぐかと思ったのだ。果たして小姐はそういう俺の手を押える。ほれみたことか、と思った矢先、彼女は俺の目をじっと見たまま、俺の手をとって服の中に導き入れた。

大柄な身体に似合わない小さい胸が掌の中におさまる。甘め判定でB。これだったら事前に触らせないほうが戦術的には良いんじゃないかと思ったが、まぁここは正直に気持ちを受け取っておくべきかな。挨拶代わりにワンクリックだけして手を服から抜き出す。正直、別に悪いところはない。いい娘だと思う。だけど何だか気が乗らない。

ふとMの方を振り向くと、彼は小姐とまさに唇を重ねるところだった。

ブチュー。

俺が目をそらす間もなく、ムードたっぷりにまたブチュー。

ディズニーアニメみたいな効果音が頭の中をよぎる。妊婦のように丸く突き出た腹を小姐の細い腰に押し付けて、Eカップはあろうかと思われるたわわな胸の感触を愉しみつつ、その唇をむさぼる上司M。俺も一緒の部屋にいるのにお構いなしだ。

迷いのない人生というのは素敵だと思う。

本当です(笑)

あ、ここは笑っちゃいけないよな(笑)



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3-8.隣室騒音
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-08

愉悦のKTVタイム。少なくとも上司Mは相当愉しんだようだ。店の会計を済ませて出口までよろよろと歩く。この店は大陸のKTVと違って小姐のお持ち帰りはないようだ。持ち帰りたかったら個別交渉ってことだ。ご満悦のMはエレベーターホールまで見送りに来た小姐を再び抱きしめて、その首筋をたっぷりとなめ回してから俺と一緒にエレベータに乗り込んだ。

階下でタクシーを拾ってホテルまで戻る。タクシーの中でMに話を振る俺。

「どうでした。かなり上手くいったようですね」
「まぁね。あの娘は後で部屋に来るよ。電話番号も聞いたし」
「えーそこまで話が進んでたんですか?」

明日午後に別件がある俺は朝一番の便で帰国だ。一方、Mは電話会議があるとかで正午チェックアウトの午後便帰国。今晩の課外活動の時間はたっぷりあるというわけだ。
それはいいんだが、問題は部屋が隣同士だということだ。上司のディープキスを見るだけでも十分なのに、アノ声まで聞かされることになるのか今晩は。

俺の思いをよそにMは逆に話を振ってくる。

「お前の方はどうなんだよ、結構可愛い小姐だったじゃないか」
「いやぁ、でもノリがなんだか違ってて」
「なんだよ、しょうがねぇなぁ」

負けず嫌いのMは何だか楽しそうだ。

そんなこんなでホテルに戻って部屋に入る。
しばらくすると、壁越しにMの声が聞こえてきた。早速例の小姐に電話してるようだ。

「Hello? ...」

声が予想外によく聞こえるので俺はたじろいだ。一体壁の厚さは何ミリなんだよ。大丈夫かこのホテルは。これじゃ寝れないよ今晩は。
そんな俺の憂鬱をよそに、Mの声が部屋に反響する。

「Hello? Hello?」

相手のいる場所が騒音で聞こえにくいのかもしれない。音楽が鳴り響くKTVの情景が目に浮かんだ。しかし、それに関係なく、やや必死さを帯びたMの声が響く。

「Hello? Are you busy??」

時計を見れば夜中の3時を回っている。こんな時間にbusyな人って誰なんだよ。新聞屋か豆腐屋かよ、と部屋の中で一人呟くがMに聞こえるわけもない。

結局、交渉は不成立に終わったようだ。
Mには悪いが、俺は短いながらも深い睡眠をぐっすりとって、翌朝一番の便で台湾を後にした。



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02 : 51 : 37 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
3-9.勝負電話
2008 / 02 / 24 ( Sun )
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怒涛の台湾出張が終っても、彼女からのメールは来ていない。
最後に俺が送ったメールからもう10日が経とうとしている。この流れは自然消滅だよなぁ。

しかし俺には切り札があった。

彼女の誕生日が近いのだ。メールが自然消滅状態にあっても、ここで一つ気合を入れて電話をしてやろう。ここで一発点数を稼ぐぞ。そう思っていた。もしここでスベったなら、それはもう縁がないってことだ。

徐々に彼女の誕生日を指折り数えるようになってくる。メールは来ないままだ。
むしろこのまま来ないでくれ、と本来の趣旨とは逆の願いを抱くようにさえなった。

そしていよいよ彼女の誕生日当日。現地時間で朝8時、日本時間で朝9時。始業前だ。会社のあるビルの1Fのロビーで、通勤してゆく人を眺めながら国際電話をかける。長い番号を押し、呼び出し音を待つ。
1回目の呼び出し音はノイズ交じりの変な音。2回目からはクリアな音質で中国の電話呼び出し音が携帯電話から聞こえてくる。4回目のコールで彼女が出た。

「喂、你好」

眠そうな彼女の声。今日は授業が遅いのか、まだ起きていなかったようだ。

「Hi, good morning. I’m ****. How are you?」
(おはよう、俺だけど、元気だった?)

起きぬけで反応の鈍い彼女。しかし、俺が電話したということは通じたようだ

「Fine. And you? I’ve not seen you for long time」
(うん、久しぶりよね)

挨拶を返す彼女に俺は決め台詞を吐いた

「Happy birthday. Today is your birthday, right?」
(誕生日おめでとう、今日だったよね確か)

うわぁ、という感じの声にならない声を彼女は発した。子供が欲しかったおもちゃをプレゼントで貰った時の様な声。驚きと嬉しさが入り混じった感情がほとばしる声だ。

物凄い手応えだ。こういうストレートな反応があるから中国小姐は好きなのだ。

ひと呼吸置いて彼女がこう言った

「Thank you. You’re the first person who celebrates my birthday」
(ありがとう。誕生日祝いを言ってくれたのはあなたが一番乗りよ)

作戦は大成功。
しかも、寝起き襲撃というのが良かったみたいだ。不思議と話が盛り上がる。
内容はたわいもないことなんだけれども、言葉を交わすこと自体が楽しくて、互いに話を続ける。

電話を切った時には電話をかけてから30分以上が経過していた。


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02 : 52 : 56 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-10.再度上陸
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-10


誕生日に朝駆けで電話をかけて大いに点数を稼いだ俺。

実際、この効果は劇的だった。
翌日からの彼女のメールの頻度、分量、そして内容までもが大きく変化したのだ。
1週間以上開いていた頻度は今や2,3日おき、量も数行ではなく画面半分ほどになった。例によって改行もスペースもないSMS調の書き方なので画面半分といっても結構な文字数になる。内容だって大きく変わった

「Honestly I want to learn Japanese, because of you, If I can get a general mastery of Japanese, I think I can know you more and better.」
(正直な話、日本語を習いたいと思ってるの。理由はあなたよ。もし日本語ができるようになったら、あなたのことをもっと沢山知ることができるもの)

なんてことを書いてくる。隔世の感があるとはこのことだ。
中国人のラブレターは詩的なものになる傾向が強いそうで、今回の彼女の場合はラブレターかどうかはまだやや微妙だけれども、詩的な叙情表現も確かに増えてきた。

メールの返信を書くのは正直、かなりの手間だった。
叙情表現が続くメールは真意を理解するために何度も読み返えさなければならなかった。そこから返事を書くのだが、普通に書いてしまうと、何とも俺の文章は直裁的で味気がない。そこでまた文章を書き直す。書き直したものを改めて読んで赤面した。こりゃやりすぎだ、やり直し。
そんなこんなでメールを出すのはいつも夜半過ぎ。メールの頻度は2,3日おきだけれど、これ以上高い頻度だったらこっちが大変になるところだった。

彼女はPCを持っておらず学校の共有PCからメールしてくる。これじゃ面倒だということで、SMSサービスをいくつか試してみたけど、「メール送ったけど読んだ?」とSMSが来る程度であまり使い勝手は良くないようだった。

そうこうするうちに上海出張が復活した。今度は長期にわたって上海と東京を行ったりきたりだ。最初の出張は来月半ば。早速彼女にメールで知らせると、直ぐに大歓迎ムードの返信がかえってきた。楽しみに待ってるわ、だと、可愛いこと言ってくれるじゃないの。

出張の日が近づいてテンションが高まった頃、彼女からのメールの末尾に「I can’t wait」の文字。“私は待つことができません”と訳して愕然としたが、よく考えたら“待ちきれない”という意味った。

うーん、楽しみだねぇこりゃ。

そして出張当日。俺は期待を胸にボーイングに乗り込み、上海へ旅立った。


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