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3-8.隣室騒音
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-08

愉悦のKTVタイム。少なくとも上司Mは相当愉しんだようだ。店の会計を済ませて出口までよろよろと歩く。この店は大陸のKTVと違って小姐のお持ち帰りはないようだ。持ち帰りたかったら個別交渉ってことだ。ご満悦のMはエレベーターホールまで見送りに来た小姐を再び抱きしめて、その首筋をたっぷりとなめ回してから俺と一緒にエレベータに乗り込んだ。

階下でタクシーを拾ってホテルまで戻る。タクシーの中でMに話を振る俺。

「どうでした。かなり上手くいったようですね」
「まぁね。あの娘は後で部屋に来るよ。電話番号も聞いたし」
「えーそこまで話が進んでたんですか?」

明日午後に別件がある俺は朝一番の便で帰国だ。一方、Mは電話会議があるとかで正午チェックアウトの午後便帰国。今晩の課外活動の時間はたっぷりあるというわけだ。
それはいいんだが、問題は部屋が隣同士だということだ。上司のディープキスを見るだけでも十分なのに、アノ声まで聞かされることになるのか今晩は。

俺の思いをよそにMは逆に話を振ってくる。

「お前の方はどうなんだよ、結構可愛い小姐だったじゃないか」
「いやぁ、でもノリがなんだか違ってて」
「なんだよ、しょうがねぇなぁ」

負けず嫌いのMは何だか楽しそうだ。

そんなこんなでホテルに戻って部屋に入る。
しばらくすると、壁越しにMの声が聞こえてきた。早速例の小姐に電話してるようだ。

「Hello? ...」

声が予想外によく聞こえるので俺はたじろいだ。一体壁の厚さは何ミリなんだよ。大丈夫かこのホテルは。これじゃ寝れないよ今晩は。
そんな俺の憂鬱をよそに、Mの声が部屋に反響する。

「Hello? Hello?」

相手のいる場所が騒音で聞こえにくいのかもしれない。音楽が鳴り響くKTVの情景が目に浮かんだ。しかし、それに関係なく、やや必死さを帯びたMの声が響く。

「Hello? Are you busy??」

時計を見れば夜中の3時を回っている。こんな時間にbusyな人って誰なんだよ。新聞屋か豆腐屋かよ、と部屋の中で一人呟くがMに聞こえるわけもない。

結局、交渉は不成立に終わったようだ。
Mには悪いが、俺は短いながらも深い睡眠をぐっすりとって、翌朝一番の便で台湾を後にした。



CN3-08b



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