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2-11.英語小姐
2007 / 02 / 09 ( Fri ) 結局俺は、英語が喋れる女の子を選んでしまった。筆談&中国語チャレンジをしたかったんだけれども、同行してるのがモノホンの中国人なのでちょっと気がひけたというのと、連戦の疲れで場の流れに逆らうだけの気力がなかったというのもあったかもしれない。 ま、そうはいっても俺の英語は全然使い物にならないので、英語で会話といってもかなり高いハードルなのだ。 選んだ女の子は松浦亜弥似のぱっちりした目の娘だ。ちょっと距離を置いて座り、”Nice to meet you” と挨拶する。品が良いというか、躾をちゃんとされたという感じがする娘だ。英語も上手、間違いなく俺よりも上手い。 なかなか手ごわいじゃないの。と思いながらも、これまで培った黄金パターン通りに会話を進めてゆく、まずは名前、年齢、出身と質問を続ける。名前は張だってさ。そうだよね中国人だものね。いいねぇその調子だよ。日式が続いたので、このノリには心が洗われる思いだ。 名前なんかは字で書いた方が早いので筆談になる。結局のところ、英語で話をしていても、ある程度わかる範囲が広がるだけで、わからないことがあれば筆談に戻ってくる感じだ。そういう意味では、漢字圏同士のコミュニケーションというのはかなり楽なもんだ。困ったら筆談に持ち込めば良い。そうすれば、大概のことは理解できる。 出身は福建省だそうだ。さすがに上海、小姐の出身地が北京とは大分異なる。揚子江以南の出身者と話をするのは初めてだ。少林寺って知ってる?と聞いたら知ってるとのこと、福州少林寺というのが地元にあるから当たり前か。やや無骨な話題から徐々に会話が始まってゆく。 見ると右手の拳が赤黒い。実は少林拳の達人で、これは拳ダコですなんてことだったらどうしようと思って恐る恐る尋ねたら、自転車で転んであざになっているんだそうだ。いいねぇ自転車。バイシクル! 中国だなぁ(しみじみ) 幸せだよボクは |
2-12.怒られた
2007 / 02 / 09 ( Fri ) ちなみに、福建省の女の子の性格は、「家庭と仕事を上手に両立できる。経済面では質素倹約型」なんだそうだ。自己紹介からいつものパターンに。相変わらず、何を知ってるとか、どこに言った的な話を続ける。でも、英語の方が中国語よりもよく喋れるので、若干このパターンでは物足りない感じだ。 彼女は英語学校に通っているらしい。どうりで流暢な訳だ。携帯電話の番号とメールアドレスも教えてくれた。中国語じゃなくて英語なのでもっと喋れるはずという気もするし、それを考えればぎこちないことこの上ないのだが、どうやら嫌われずに済んだみたいだ。 そうこうするうちに2時間弱が経過した。彼女がトイレに行くと言って席を立つ。その間にリーダーが俺の方に振り返って 「そろそろお開きにしましょう。小姐を持ち帰りますか?」 何となく雰囲気が気に入っていたので 「じゃぁ、そうします」 と返す。リーダーはしばらくママと交渉していたが、再度こちらを振り返り。 「すみません、彼女は持ち帰りできる娘じゃないみたいです。持ち帰りたいなら他の娘に変えますか」 この辺が中国人だ。確かに理屈は通ってるんだけど、もうちょっと言い方配慮してくれよ、みたいな感じ。俺の方も別に持ち帰りが目的ではないので、変える必要はないと答える。でも、なんだか釈然としない気分だ。トイレから戻ってきた彼女に思わずぼやく。 「ごめんね、連れが持ち帰りできるかなんてことをママに聞いて断られちゃったよ」 「ひどいこと言わないでよ。私はそんなことはしないわ」 彼女は俺の言葉に憤慨した。あーもぅ、何だか踏んだりけったりだよ。 思わず言い訳をする俺。 「I’m sorry.But I did it, because I like you.」 「。。。。」 (あ、これは効きましたよ) もし俺たちのことがTVで実況中継されてたら、解説の谷川さんがきっとこう言ったに違いない。それほど明確なリアクションだ。彼女は一瞬絶句してこちらを凝視している。そうだった。中国の小姐って、こういうストレートなリアクションをするんだった。まるでマンガみたいだが、この流れは北京でも覚えがある。 しかし今回は逆に俺の方がその雰囲気に耐えかねて口を開いた。 「ま、とにかく悪かったよ」 この辺の詰めの甘さに連戦の疲労が垣間見える。結局、KO寸前まで追い詰めながらも決めきれず、やや複雑な気持ちで一人、店を後にした俺だった。 |
2-13.上海残留
2007 / 02 / 09 ( Fri ) ホテルに帰ってエレベーターホールへ。閉まりかけの扉を開けて中に滑り込むと、中に男女が立っていた。年配の日本人と、若い小姐だ。明らかに連れなのに、微妙な距離感がある。ははぁ、お持ち帰りあそばされましたか。けっ。おめでたいこった。こっちは散々だってのに。と、心の中で毒づく俺だった。 さて、予定ではこのまま翌朝一番の便で日本に帰るはずだったが、部屋でメールをチェックするとこちらの支社の人間から、打合せしたいから週明けまで残れ、との指示。何の打合せだよと思ったが、もう夜中なので確認のしようもない。しょうがないので飛行機のキャンセルだけをして床についた。 *** 翌朝。メールをくれた中国人のYに電話。といっても中国語じゃなくて英語だ。とりあえず今日からの宿泊場所を確保しなければならない。Yが土地勘のあるところで手配をしてくれたのだが、ホテル名を聞くのが大変だ。英語の会話なので英語名称はわかるのだが、それではタクシーの運転手に伝えられない。彼らには紙に書いて見せればいいのだが、そうなると、中国語でどう書くかがわかっていなければならない。でも、英語の電話でそれは至難の業なのだ。 結局、ロビーまで降りて、フロントに電話を代わってもらい、中国名をメモってもらった。そのメモをタクシーの運転手に見せて、移動。 着いたのは小綺麗な建物。部屋に入ると無茶苦茶広い。リビングにベッドルームが二つ。風呂とトイレも二つある。キッチンもあるけど、冷蔵庫には何も入っていない。そこはホテルじゃなくてウイークリーマンションのようなものだった。でも明らかに一人用じゃない。いきなりの予約なので部屋がなかったのかもしれない。四つ星、五つ星ホテルよりは安いかもしれないが、それでも結構な値段だ。 窓を開けると暖かい空気とともに外の雑音が入ってきた。ひっきりなしにクラクションが鳴っている。4月上旬の暖かな空気が風に乗って部屋の中をかけめぐる。なかなか気持ちが良い。 何となく明るい気分になりながら、荷物をほどき、Yに報告の電話。無事チェックインしたよ。いい部屋なんだけど異常にでかいぞ。2泊の予定だと言ったのに、ベッドルーム2つと勘違いしたのかな。とふざける俺に、まぁいいじゃないか、とりあえず夜になったら呑みに行こうと言って電話を切るY。 もともと週末残ることにしたのは打合せがあるって話だったのだが、完全にその話はどこかに消えてしまっている。 |
2-14.夜の帝王
2007 / 02 / 09 ( Fri ) 夜まで時間があるので、散歩に出ることにした。ぶらぶら上海市内を東の方に歩き出す。北京に比べて随分狭いというのが第一印象だったが、歩いて回る分には丁度良い大きさだ。 ゴミが落ちてたり、道路に露天みたいなものが出てたりと、ごちゃごちゃしているところはあるが、建物が洋館風で良い雰囲気を醸し出していて、殺風景な雰囲気ではなく、なかなか居心地は良い。アパートの窓から長い物干し竿が突き出ていて、そこに洗濯物が翻っている。香港映画で見たような風景だ。やっぱり北京からかなり南に来たのかなぁ。 てくてく歩いているうちに外灘に着いてしまった。 ホントに狭い街だよな。 雲行きが怪しくなってきたのでホテルに戻り、軽く飯を食って、部屋でビール片手にテレビを見ながら電話を待つ。夜9時過ぎ、Yから電話が入った。子供を寝かしつけることにようやく成功したみたいだ。これからは大人の時間ってわけだ。 ホテルのロビーで待ち合わせしよう、という話なので身支度をして階下に下りる。 ロビーでYと落ち合い、二人でホテルの前からタクシーに乗る。夕方から降り始めた雨はいまや大降りになってきている。最初に行ったのは瑞金一路の傍にあるバーだ。ここは外人向けのバーが沢山あるということで知られている通りらしい。 タクシーが止まると、Yは財布の札を捜しながら「发票」と大声で言い、「给我」と付け足した。ほほぅ、そういうんですが現地の中国人は。心の中でメモを取る俺。 バーに入り、小瓶のビールをそのまま右手に握って口に運びながら作戦会議だ。 「で、今日はどこに行く?KTVか、サウナか、それともここで調達するか」 出てくる選択肢が実に男らしい。もう初っ端から直球勝負だ。 「ここで調達できんのかよ」 と聞くと、解説してくれた。こういうバーでは所謂個人営業の娼婦がいるらしい。 「たとえば、」とYは言って顎をしゃくってみせた。 「あのカウンターの向こうにいる女はavailableだ」 「へぇ~」 「あんまりじろじろ見るなよ、寄って来るぞ」 とはいえ、それはあまりにもいきなりだ。サウナっていうのは日本でいうソープみたいなもんだけど、それもヤルだけ。どっちかというと、北京で慣らした経験をもとに、小姐とおしゃべりしたい。 「KTVがいいな」と言うと、 「よしわかった、任せとけ」 昼間の仕事の100倍くらい頼もしく見えるYが、自信たっぷりに言い切った。 |
2-15.中式享楽
2007 / 02 / 09 ( Fri ) ビール1本だけで勘定を済ませ、土砂降りの中タクシーを拾ってKTVへ。Yのコネのある店らしい。店のママともう5年以上の付き合いなんだそうだ。最初に会った時に相手はKTV girl で、その後出世してママになったんだと。とはいっても、最近ご無沙汰だったらしく、電話の話が長い。と、タクシーが大きく向きを変えた。聞いてみると、最近店を移ったらしい。 かなり走った後でタクシーがようやく止まる。街の中心部から外れたところらしく、ネオンが少ないが、そのビルだけ煌煌と輝いている。相変わらず中式KTVは派手目の造りだ。 店の中に入って部屋に案内される。昨日行った店に比べれば大分質素で安そうな感じだ。ママが出てきてYと挨拶。欧米系のノリで大げさに抱き合って再開を喜んでいる。俺も紹介されたが、正直何を言っているかはよくわからない。 次いで、小姐が入ってきた。ずらずらと、ではなく5人だけだ。気に入ったのがいなければ、次の5人がまた入ってくるという具合だ。2巡目でいい感じの娘がいたので指名。 北京で大分自信をつけているので癒し系の安全牌ではなく、可愛い系の小姐を選択だ。穴あきジーンズを履いてる。そういやぁ今までのKTVは女の子がドレスを着てたけれど、この店はかなり普段着っぽい。いろんな店があるもんだ、というか、中国人しかいかない店だとこうなるのか?確かに、ドレスを着せるなんてのはコトの本題とまるで関係がないから、合理的な中国人が価値を認めるとは考えにくい。 俺の選択を見てYが唸った。が、次の瞬間はっと気づいた様子で待ったをかける 「彼女は英語喋れないけどいいのか?」 「問題ないよ」 「ほんと?」 「大丈夫」 お前な、心配してるっていうよりも、自分で指名したかっただけじゃないの? まぁとにかくYを納得させると、女の子が俺の横に座る。まずは挨拶、そして自己紹介。さて、北京での特訓の成果を見せるときだ、いざ見参。ようやく上海を味わう日が来たぜ。 Yの方はなかなか小姐が決まらない。5~6巡しても駄目で、そのまま外に出て行ってしまった。5分くらいしてから、一人の小姐の手を引いて戻ってきた。聞くと、小姐の控え室まで乗り込んでKTVにいる全員の中から選んできたのだという。 「すごかったぜ」 Yが目を輝かして言う 「まるで動物園だ」 |
2-16.へべれけ
2007 / 02 / 09 ( Fri ) 今まで何度かKTVに行ったけど、皆、小姐を指名した後はツーショット状態で互いの会話なんてほとんどなかった。でも、Yは全然違うノリなのだ。俺が中国語喋れないということで気をつかっているのかもしれないが、とにかく、二人だけにしない。四人一緒に盛り上がろうと、いろいろ絡んでくる。 最初に乾杯。カンペーイとかいって、グラスを干さないと怒られる。そういうノリかよ。しばらくすると、サイコロゲームしようとお誘いがかかる。全然会話ができやしない。サイコロゲームは対戦式だ、俺とYが対戦し、それぞれ小姐が加勢する。負けるとグラスのビールを一気飲みしなきゃならない。これはかなりきつい。何しろ回数が多いのだ。 後半になってくると、だんだん皆必死になってくる。俺が指名した小姐は、相手の目を盗んで酒を床にこぼしてカーペットに染み込ませた。で、すかさず飲み干した振りをしてみせる。プロの技として聞いたことはあったけど、実際に見たのは初めてだ。しかし、それも納得できるほどのクレイジーな飲み方だ。ったくもう、学生コンパじゃないんだから。 その店のシステムは中国の一般的なシステムで、客は、酒代と場所代とチップを払う。チップは小姐が全額受け取り、場所代はママの稼ぎになる。酒代は店の稼ぎというわけだ。それぞれ全く別個に回っているので、小姐やママは客が酒を呑もうが呑むまいが気にしない。自分の収入に関係ないからだ。 そんな中で何故Yがそういうノリに走ったかというと、俺を気遣ってのことなのだ。彼いわく、中国語が喋れない俺が楽しめなくてはよくないと。いやぁ、申し訳ないけどそいつは余計なお世話ってもんだ。お前さん俺のこと全然分かってないよ。でもまぁ、結果的には結構楽しかったけどな。 2時間弱経過する頃には、一同ひどい酔っ払いになっていた。タバコの煙ももうもうと室内に立ち込める。酒と煙草と女という、オトナの遊びの3点セットを充分楽しんだところで、そろそろお開きにしましょうか。 と、Yがなにやら交渉中。 「持ち帰れるように交渉したからな」 「ええっ?お前どうすんだよ、家に家族がいるだろ」 「大丈夫だ。お前の部屋にはベッドルームが二つあるんだろ」 こらこらっ!そりゃまずいだろっ! |
2-17.乱痴気
2007 / 02 / 09 ( Fri ) KTVにはいろんな客が来る。後日、KTV小姐にどんな客が嫌な客かと聞いたら、機嫌の悪い客や気難しい客が嫌だ、との話だった。しかも不幸なことに、それなりの確率でいるらしい。考えてみれば鬱憤を晴らしにKTVで女でも抱くか、みたいな客は結構いるのかもしれない。 そんなわけで、気のいい外国人を演じ続ける俺は、このKTVでも結構気に入られたのだった。今後は一人でもいいから来てくれと言う。そんな無茶な。でも、彼女らにしてみれば、気難しい客よりかは、言葉の通じないけど気のいい客の方が余程いいらしかった。 そんなこんなでふとYの方を見ると、ママとの肩を抱きかかえて耳元で何かささやいている。そういえばYとママは旧知の仲なのだ。久しぶりに会ったということで積もる話もあるんだろう。でもしばらくして小姐が着替えて戻ってくると、さ、行こうかといって立ち上がった。 この状況で平気で他の小姐を持ち帰るYは凄いと思った。というか、Yの問題というより、中国人がそうなのか? どうもこのYといい、最初に俺を中式KTVに案内してくれた協力会社のGといい、この種の風俗に対して明確な割り切りがあるように思う。欲望を欲望として割り切り、それを処理するための手順を極めて合理的に組み立ててゆく。この辺の感覚は、どこまでもじめじめとした情愛を求める日本的感覚と異なるところかもしれない。 そんなこんなで、俺とYと小姐の2人、そしてママの5人で店を出てエスカレーターを降りて玄関口へ。タクシーが既に待機してる。1台だけだ。俺たちは男女4人なんだけど、4人とも後ろの座席に乗り込んだ。俺とYが座って、その膝の上に小姐が腰を下ろす。で、レッツラゴー。 おいおい、大丈夫かよこんなの。 運転手が怒り出すんじゃないかと冷や冷やものだったが、何も言わない。一方、Yと小姐2人はもうノリノリだ。きゃぁきゃぁ大盛り上がりでタクシーの後部座席で騒いでいる。中国人はラテン系だと評した本があったけれど、なるほどそうかもしれないと、この時思った。 タクシーがホテルに着く。こんなド派手な登場をしてホテルマンが目を剥くんじゃないかと思ったが、何も言わない。それどころか、先に下りたYが笑いながらホテルマンの背中を叩き、言葉を交わしている。 確かに異常だけど、ここまで行くと非日常を心行くまで楽しんだ感じがする。 そして、上海の街はこんな俺たちに対して案外優しかった。 |
2-18.クレーム
2007 / 02 / 09 ( Fri ) 4人でエレベーターに乗り込み、宿泊している階まで上がる。かなり酔いが回っていて皆足元が覚束ない。ふらつきながら部屋の鍵を開け、中に入る。 「おっし、俺たちはメインのベッドルームを使うからお前らはサブのベッドルームを使えよ。バスルームとトイレも別々になってるからな。お前らのはここだ」 英語でYに説明をする。で、部屋に分かれて扉を閉めた。 早速シャワーを浴び、事を始める。しかし相当酔っていたようだ。途中でトイレに行きたくなった。一段落するまで我慢できるかと思ったが酔った時の尿意はどうにもならない。そもそも相当量のビールを呑んでいるのだ。 「我要去手洗間」 と言ってトイレに行く。長いトイレの後、部屋に戻ると、小姐が下着を着けはじめていた。おいおい、そりゃないだろ、まだ終わってないよ。 小姐の肩をつかみ、文句をつける。 「我没満足了」(俺はまだ満足してないぞ) 「我支付你。你要我満足」(金は払ったんだ。満足させろ) “満足”という言葉は北京時代に調べて言葉だ。辞書で調べて当時の彼女に言ったら笑われた。あんまり使わないみたいだ。その後使わなかったが、この時になって思いついたのがその言葉だった。 言いたかったのは「ちょっと待ってよ、まだ終わってないでしょ」という程度の軽いニュアンスなんだったのだが、結果的に物凄い強面な文章になってしまった。 彼女は黙って俺の指示に従った。下着を脱ぐと、俺の身体をまさぐり始める。でも反応しない。そもそも相当酔っているのだ。俺もとっさに意地を張っただけで、正直、持ち帰りなんかするよりもさっさと眠ってしまいたいところだった。 「無理よ」彼女が泣きそうな声で言った「あなたお酒呑みすぎたのよ」。酔っていて彼女が中国語で何と言ったか覚えていないが、確かにこういう意味のことを言った。そこで始めて彼女が怯えていることに気がついて、あわてて彼女を抱き寄せて。 「不要(もういいよ)」と言う。そして、機嫌をとろうと 「我要你的手机号码,可以吗?(携帯の番号教えてよ)」と水を向けた。 途端に泣きそうだった小姐がノリノリに戻った。差し出した手帳にバカでかい字で名前と電話番号を書くと、いたずらっぽい目で俺を見上げながら「いつ電話くれるの?」と問いかけた。 何という感情の変化だ。 全く、こいつらときたら、まるで子供みたいだ。 |
2-19.後始末
2007 / 02 / 09 ( Fri ) 携帯番号を教わったところで、ドアをノックする音がした。Yが待ちきれず催促したのだ。 ネットの掲示板で、中国人は早い、というのを聞いたことがある。入れたら1~2分なんだそうだ。ホントかどうか知らないが、確かにYのノックは日本的感覚からすると異常に早い段階での催促だった。 「今いくよ!」 と怒鳴って、二人で服を着る。部屋を出るとYが扉の向こうで煙草を1本吸う終えるところだった。 じゃ、本当にお開きにしますか。という感じで俺以外の3人が帰り支度に入る。俺の小姐が 「月曜日よね」 と念押しをしてくる。いつ電話くれるか、との問いに取りあえず月曜日と答えたのだった。そうだとうなづくと、約束よ、とばかりにキスをねだる。軽く応じるけど、あーあ、Yの目の前だよ。 Yが「何の話だよ」とばかりに小姐に声をかける。 「つーか、俺にもキスしてくれよ」 といった風にジェスチャーで口を尖らせる。この辺が文化の違いだよなぁ。お前はお前の小姐がいるだろう、と思ってしまう。 でも、小姐は「だ~め」とばかりに何事か言って大声で笑う。何だか携帯番号を聞かれたのが相当嬉しいらしい。まるで俺の女にでもなったかのような立ち振る舞いで、Yとの会話を楽しんでいる様子だ。多分、Yもわかってわざと話題を振ったんだろう。 Yが中国語で何事か小姐に聞く。と小姐が視線を合わせずに「没有」と答えた。ん、ヤってないことを言ってるのかな?何でそんなこと聞くんだろう。もしや、何で小姐がウキウキ気分なのか探りを入れてたか?ということは、中国人のYから見ても小姐のハイテンションは異例だということかもしれないな。 なんだかんだでYと小姐たちを送り出すと、部屋が急に静になった。 だだっ広い室内に俺一人だ。 何となく酔いも醒めてきたので、そのまま彼らの残した吸殻やビールの空き瓶を片付ける。Yに貸したベッドルームに入ると、ベッドは全く乱れていなかった。あれ?結局やつも何もしなかったのかな? ふと見ると、ベッドサイドのテーブルに使用済みのあれが放置してあった。 あ~~、間違いなくやってますねこれは。 っつーか、片付けて帰れよこういうものは。 |
2-20.完全忘却
2007 / 03 / 04 ( Sun ) まぁ、そんなこんなで、これまでの厄を落とすかのような一夜が終わり、明けて日曜日の朝。というか昼。やや二日酔い気味のまま目覚め、まずはホテル1Fのオープンテラスで昼食を食べる。昨日の雨も上がり、再び春の日差しが戻ってきてなかなか気持ちが良い。 さて、今夜の展開はどうするかなぁ。昨日の今日じゃぁいくらなんでもYもきついだろう。そもそも彼は家族持ちなのだ。ちょっと考えてアイデアを思いついた。そうだ、金曜日、携帯番号を貰ったじゃないか。小姐に。 しかし凄いなぁ。週末こっちに残るとこうなっちゃうんだ。そりゃそうだよな。他にすることないもんな。日々、小姐のことばかり考えて生きる、これこそ男の人生ってもんだ(違うよ)。 早速電話をかける。一応、準備はしたものの、英語が通じるので比較的楽なものだ。 数コールの後に彼女が出た 「喂,你好」 「Hello」 「Hello!?」 訝しげな声だ。ハローの一言で通じた北京とは大違いだ。 「Do you remember me?」 と、最後の望みを託しながら問いかけたところ、彼女の返答は無情にも 「...... Who is it?」 おいおい、完全に忘れてやがるぜ。会ったのは一昨日のことなのに。 しかもモノ扱いかよ。 文法的には正しいのだけれど、you じゃなくてit と言われたことに軽いショックを受けた。 「ワタシは昨日、○○の店であなたと会いました」 と、たどたどしい英語で言うと 「あ~~~」 と反応。はいはい、なるほどね、という口調だ。 で、改めて 「How are you today?」 ときた。 元気なわけねーだろ畜生め、上海に来てから厄日続きだよ、と思ったけど、それを言ってもはじまらない。というか、それを表現するだけの英語力が、俺にはない。しょうがないのでおとなしく返答を返す。 「I’m fine thank you, and you?」 あぁもう、なんだかNHKのラジオ英会話で習った例文そのままだし。 まったく情けないていたらくだ。昨日のツキがなかったらここで終わっていたかもしれない。 でも、ここで俺は少し粘りを発揮した。 |