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(8) 訪問
2007 / 01 / 03 ( Wed )
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大汗をかいて国際電話をかけ、中国語しか通じない相手との待ち合わせの約束に成功した俺。

で、出張の当日。北京に着いてホテルにチェックインする。すぐに単独行動開始。中国内での単独行動は初めてである。不安はあったが、意を決してタクシーを拾って待ち合わせ場所まで。20分程度で到着した。降りて辺りを見回すと、微笑みながら近づいてくる私服の彼女がいた。

挨拶は笑顔だけで通じる。言葉はいらない。筆談で話しかけようとしてメモ帳を出したら、彼女に止められた。街中でそういうのは恥ずかしいので嫌みたいだ。

しかし、筆談がなければコミュニケーションができない。戸惑う俺に対し、彼女はさっと俺のメモ帳に走り書きした。「春節回家」家に戻るということか?彼女の家に行くのか?

仕方ないので彼女についてゆく。ホテルの脇から路地裏に入る。そのままずんずんと奥に入ってゆく。通りを二つほど奥に入るともう表通りとは全く違った町並みになった。人通りはあるが外国人の姿はない。狭い路地に面して「○○招待所」という看板のビルが見える。目に入る文字全てが中国語で、建物は一様に古びて汚い。

さらに暫く歩いた後、彼女が左側の門から敷地内に入った。門は鉄格子だ。中に入ると殺風景な敷地内に無造作にビルが3つ建っている。窓には鉄格子。閉塞感のある光景だ。そ知らぬ顔で歩きながらも、緊張感が高まってゆく。

彼女は敷地の一番奥のビルの開け放たれた入り口から中に入った。廃墟のような建物だ。彼女について中に入ると、入り口で話をしていた男二人が振り返ってこちらを見た。

俺は出張で来たので、基本、スーツ姿なのだ。ややカジュアルなスーツで、ネクタイも締めてないとはいえ、この廃墟の様な光景の中では明らかに浮いている。彼女はジーンズルックなので、とてもじゃないがまともな関係には見えないだろう。

これはかなりヤバイかもしれんなぁ。この先で強面の男が待ってたらどうしよう。あるいは、建物の中の他の連中がおかしな奴だと考えて襲ってきたら? もし、彼女に悪気がなくても、彼女に守ってもらうわけにもいくまい。

3階まで階段を上って廊下を奥まで歩く。途中、掃除のおばさんのような感じの人とすれ違った。視線を前に向けたまま、全神経を背後に集中する。何か変なことがあったら、すぐに動き始めなければ。最低限、門の外、できればホテルの傍まで逃げ帰らなければ安全じゃない。でも、既に相当な距離、奥まで入ってきてしまっているのだ。

廊下の一番奥のところで彼女は止まり、扉を開けた。中は8畳ほどの広さで奥にすりガラスの窓が一つ、それに頭を向けてベッドが二つ並んでいる。上にはロープが張られ洗濯物が干してある。そのまま靴で入るような硬い汚れた床で、隅の方には雑巾だろうか、布がうち捨てられている。ここが彼女の部屋のようだった。風呂もトイレも共同の部屋に、ルームメイトと二人で住んでいる様子だ。

彼女は部屋に入ると、始めてこちらを振り向き、ちょっと笑顔を見せた。それから手を伸ばしてテレビをつける。小さいテレビだ。そして、二人並んで少し湿った感じのするベッドに腰をかけた。

一応、翻訳機を持っていたが、この場に合う文例がない。部屋を訪問したときというコーナーで「綺麗な部屋ですね」という文があったので彼女に見せたら「何を言ってるのよ」という仕草。

確かに汚い部屋である。刑務所みたいだ。


00 : 30 : 22 | 筆談小姐 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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